闇ノ雫




こいつは知らない。


俺達が敵だということ。


俺が悪かったんだ……最初から、小松と距離を置いておけば。


どうして優しくしてしまった?


──…好き、だからか?




「ご、ごめん……急に言われて、困るよね?」


「……」


「ほんとごめん、忘れ……」


「──すまない」




そう、一言呟くように言うと、小松の目が少し見開いた。




「……え…」


「すまない……」




これ以上小松の隣にいてはいけない。


踵を返し、俺は自分の部屋へ向かった。


その途中で、少し後ろを振り返る。




「う……っ」




小松は一人、その場にしゃがみ込み、声を押し殺すようにして泣いていた──。