「何だ」
「いや、芳乃さんのことなんですけど……」
……芳乃などと、気安く呼ぶな。
ふつふつと、何故だか湧いてくる怒りのような感情。
いや……何を考えている、俺は。
そんな風に思う権利など、微塵もないのに。
蓋をしたはずではないか……自分の想いに。
そんな気持ちを打ち払って、沖田さんと向き合う。
「小松か……何か気付いたことでもあったか?」
「はい。というか、山崎さんはもう気付いているかもしれませんが……」
沖田さんはそう言うと、ちらりと周りを確認した。
小松がいないかどうか不安になったのであろう。
それを確認した上で、ひっそりとした声で俺に言う。
「芳乃さん、夜は外に出る習慣があるようです。この間あとを追ったら、忍装束を着ていて……やはり長州あたりと密接な関係があると思うのですが」

