それから、芳乃を連れて屯所に帰り、土蔵に入れた。


せっかく再会したというのに、手を縛ったりとかそんな扱いをしなければならなくて……辛かった。


……仕事に集中しなければならない。


気が乱れそうになる度に、ぐっと拳を握りしめて耐えた。


だが、この日で分かったこと。


それは──…芳乃は、自分のことを覚えていないということだ。


……その夜は、あまり眠れなかった。


もしも夢であるならば、目覚めてほしくない……と。


だが瞼は言うことを聞いてくれず、仕事の疲れからかあっさりと夢の中に落ちてしまった。


日の光で目を覚ませば、いつもの朝。


しばらくぼんやりと宙を見つめたが、はっとして、急いで土蔵に向かった。


そこには、小さく体を丸めて寝ている芳乃の姿。


縛っていた縄は、解かれている。


夢ではなかったのだとほっとする反面、縄を解かれたことから、小松流もかなり強くなったのだと思い知らされた。


しかし、芳乃は今までどこにいたのだろうか?


肝心なそれが分からず、それ以前に、副長の質問に対する芳乃の答えの中には聞いたこともない言葉が含まれていた。


そのような言葉を使う芳乃に対し、副長は苛立ち始める。