……が。





「き…、きさまぁぁーーっ!」





すたすたと歩く俺の後ろから、ダダダダッと聞こえてくる走る音。


またあの男か、しつこくてため息が出る。


どうして観念してくれない。


きっと刀は振り上げているだろう。


本当、しつこい男だ。


俺に構っていて何が楽しいのだろうか。


歩きながら、懐に忍ばせておいていた苦無を握りしめる。


直後、俺は振り返り、ガキィン!と金属音が響いた。


気配が分かり易すぎる、どうしてもっと足音を潜めない。


真後ろにきた瞬間はすぐに分かった。


苦無と刀を間に挟んで、睨み合う。


だが、殺すのは何だか気が引ける。


キンッと苦無を引っ込ませると、拳を握りしめて、男の顔面を思い切り殴り付けた。


男は、今度は気を失った。


やっと面倒なことが終わった……と、俺は一人息をつく。