芳乃は、ふふんと得意気に言うなり、そしてきらきらした笑顔を俺に向けた。


──この笑顔を守りたい。


日を重ねていくうちに、そんな感情は強くなり、やがてそれは大きくなっていった。


芳乃を喜ばせるつもりが、だんだん、俺も楽しくなってきたんだ。


この子の隣にいることが、嬉しくて居心地が良くて、仕方がなかった。


あの事件のことも忘れるくらい、毎日、芳乃と遊んで。


笑顔を交わしあって。


だから……





「──出てけぇ!山崎家の者は、子供であっても決して中に入ってはならぬ!」





勘違いしていた。


自分は芳乃の親を殺していない、だから自分は憎まれない……と。


ただし、殺したのは俺の両親。


山崎家だ。


俺は、山崎烝……れっきとした山崎家の人間。


小松家の者が憎むのは、俺の両親ではない。


山崎家全体なのだ、と。


いつものように遊んでいるとき、芳乃の祖父と思われる人が出てきて、俺は、芳乃にはまだ家族がいたんだと安心すると共に、闇の中に落とされた。