途端に、あの時の恐怖が俺に襲いかかってきた。 また、小松が消えてしまう──。 「芳乃……っ!」 この女の名を、叫んだ。 遠い昔のように。 ひょっとしたら、俺が楽しいと思っていた過去を、思い出してくれるのではないか。 あの過去を小松が知ったとしても、今までと変わらず接してくれるのではないか。 だが、そんな淡い期待は叶うはずがないのだ。 小松が消える瞬間、俺の頬を涙が伝っていた。