「あ、ごめんなさい。驚いてしまって。後ろを振り向いたらいきなり人がいて、ちょっとびっくりしちゃって」


何も喋らない人物に対し、最初の失礼を詫びる依子。


後ろに人がいると思わなかったとはいえ、全く気付かなかった。


ひょっとしたらこの人も妖怪退治屋かもしれないな、その服もそうだったら納得できるし。と内心思いを巡らしている彼女の心境を知ってか知らずか、ようやく目の前の人物から言葉が発せられた。



「こんにちは」



「…………」


とりあえず、その声で目の前の人物が“彼”と形容できること、若いということが判った。


彼が最初に発した言葉。時間は昼を過ぎ、時間的には正しい挨拶なのだが、依子からしてみればピンぼけしたものだった。