「それじゃあまたね」という依子の言葉に、豆狸達は「じゃーねー」「またねー」「さようならー」と言葉を残し、去って行った。
その姿が見えなくなるまで見届けて、依子は立ち上がり、振り返って驚いた。
「わッ!?」
視線の先には、人がいた。
人を見て驚くとは失礼なことだが、そうしてしまった理由はある。
その人物の格好。行脚僧姿に身を包んだその人は、左手は被っている笠に手を掛け、右手には錫杖を持っている。
笠を前に傾けているため、その人物の顔は伺えない。多分、男。と思うのは服装からだが、年齢は今のところ全く判断がつかない。
尤も、依子自身は巫女服を着ているため、服装に関してはどっちもどっちと言えるかもしれないが。


