「………………」
ああどうしよう。考えれば考えるほど悩めてしまう。
黙りこくり、思考を巡らす依子を見て、久方は穏やかな笑みを浮かべている。その顔が妙に腹立たしくもなり、
「──あーもうッ、訳分かんなくなってきたぁ」
空を仰ぎ見て、依子はそれ以上考えるのを止めた。そして一息ついて蛇神を札に戻す。
「……降参してもいいかしら?」
「『降参』ではありませんよ。あなたは負けていませんから。──ええ、これにてお開きといたしましょう」
依子の言葉を一つ訂正し、久方は錫杖を鳴らして対戦終了の合図をとった。
「──ありがとうございました」
最後に被っていた笠を取り、久方は依子に一礼を。それを見た彼女もそれに倣った。


