「そうですね。では、一つはったりをかましてみましょうか」
「え?」
予想外のことを言い出した久方に、依子は素直に驚いた。何をいっているのかしらと怪訝な顔。それを見て彼は“はったりをかけた”。
「周囲の地面、そして木に札を仕込みました。私が一つ、声を掛ければそれは発動します。さあ、いかがしましょうか?」
「…………」
依子は考える。はったりをかますとは、それらしくも大袈裟に、自身を誇張すること。ならばそれは彼がいったことは嘘だという話だろうか。
いやしかし、それが嘘だとどうして言い切れる。実際、彼ならば札を仕込むことは可能であり、さもありなんと納得できる。
ちょっと待て。ひょっとしたら、はったりをかますという言葉自体がはったりで、ならばそれは嘘に嘘を被せて本当のこととなるのだろうか。
いやそうなれば──。


