白い煙の中から現れたのは、二つの首を持つ蛇、蛇神(みずち)。右頭の目が久方を見詰める。 「ああこれは、ちょっとばかし危険ですね。左は毒を吐く、でしたか」 「その通りよ。さあ、あなたはどうするの?」 「どうする、ですか。ああ、本当にどうしましょう。何しろ動けませんからね」 蛇神の右頭の目、それに睨まれてから久方は金縛りにあった。 「蛇に睨まれた蛙は、きっとこのような状態なのですね」 そういう彼にはまだ余裕がありそうだ。依子は油断なく警戒する。