久方が使役する鎌鼬は三人連れ。それぞれに役割があり、一番が対象を倒し、二番が斬り、三番が血止め薬を塗るという。
そして、それらを行うのは正に一瞬。ならば視界で認識するのは難しい。
彼の言葉通りならば、鳴神は一度の斬り付けで倒されたということになる。そのことに驚きはしたものの、ここで怯む訳にはいかない。
「──おいでくださいませッ」
二枚目に出した札から出てきたのは黒鬼。名を鬼神(きしん)、三メートルはあろう巨体が久方を見下ろす。
「……ああこれは、斬るのになかなか苦労しそうですね」
笠を押さえながら鬼を見上げ、他人事のように呟いた言葉。けれどもそれは鎌鼬にとっては合図だったようで、次の瞬間には鬼神に襲い掛かった。しかし、
「鬼神ちゃんは、そのくらいじゃやられないんだからッ」
彼女の言う通り、多少の傷は負っているものの、深手というほどでもない。それに、あの巨体を倒すのは難しいようだ。


