「参りましては鎌鼬(かまいたち)、狙うは鳴神、負わすは一撃」
言い終わると同時に久方が持つ札から風が吹き、
「……え?」
ひらりと一枚札が舞った。
依子は一瞬、何が起こったのか判らなかった。
久方が札──式神を取り出し、呼んだのは鎌鼬。それは判っている。そして、そこからだ。
突進していたはずの鳴神が札に戻り、地面に落ちると同時に二枚になった。それは鳴神が深手を負ったということになるのだが、依子はそれを認識することが出来なかった。
久方の周りに風が吹くと同時に、鎌鼬が彼の傍に地に降り立つ。そして依子は彼の式神を見る。
「……あなたの鎌鼬って、三人連れなの?」
「ええ、その通りです」
そう答える彼の目は薄く開かれていた。


