「ああ、失礼。言葉が足りないようで。──あなたの実力を見せて頂きたいのです。私としても、ここには仕事で来ておりまして、おいそれと、あなたの判断を信じて『そうですか』と引き下がる訳にはいかないのです。
それに、あなたは全ての妖怪と友達になりたいそうで。でしたら尚更のこと──」
「…………」
恐らくは、妖怪に対して甘い判断をしているのではないかと思われている。そうでなくとも、それに近いことだろう。
それは仕方のないことかもしれない。ならば、自分の思いと実力、見せつけようではないか。
「判りました。勝負、受けて立ちます」
「いえ、勝負というほどでは。私が納得できるまで、ですので勝敗を決める必要は」
ありません。といった久方は、左手を笠から離して降ろし、錫杖を一回鳴らした。
「では、参りましょうか」
その言葉が合図となった。


