冷酷彼氏の憂鬱

「ちひろくん……っ」

「……」


 とろけそうな顔、上目遣い、呂律の回っていない口調、……すべてがすべて、俺を魅了した。

 もう一歩、大人の階段をのぼりそうになったが、ギリギリのところで踏み止まる。


「その顔、他の奴らに見せるなよ」

「ふぇ?」

「見せたら、“お仕置き”な?」

「う、うん……」


 愛美は涙目になりながらもコクンとうなずいた。

 それを見届けた俺は、両手を離して愛美を解放させた。


「じゃ、先に教室に戻ってるから」

「えっ、私も一緒に……」

「ダメだ」