そんな朝だったから、私は一日、憂鬱に過ごした。

逃げずに何かと向き合えば、もう片方から逃げていることになる。
だけど、本当に選びたいものを選ぶことは許されなくて。

先生にもらったピンキーリングを、何度も何度も見つめた。
きらきらと光る石のついた、シルバーのリング。
その輝きがくらくらと眩しい。

小さくて、失くしてしまいそうで。

まるで、先生みたいだと思った。


今までみたいに一人なら、寂しさも感じないけど。
一人じゃないから、もっと寂しい。


好きな人が、私のことを大切にしてくれる幸せに、浸ることさえ許されなくて。



「先生……。」



ねえ、先生。
雨の日は、連れて行ってよ。



すべてから逃げることを、あなたならきっと、許してくれるでしょう?