学校の校門を抜けて、私はまっすぐ図書室に向かう。
心を封じ込めるように。


高校2年までは、授業に出ていた。
クラスにとっては空気のような存在だったけれど。
でも、それでも私は、教室にいたんだ。


3年の夏、私は教室にいることさえできなくなった。

それは、体育の時間のこと。

夏でも長袖長ズボンの体育着で授業を受けていた私は、担任に呼び出された。



「笹森、そんな格好だと熱中症になるだろ。半袖短パンに今すぐ着替えなさい。」

「……。」

無言でうつむいて首を振った私に、担任は苛立ったように怒鳴った。

「別に俺は、お前の勝手だと思っている。だが、お前が倒れたら俺の責任になるんだよ!!」

と。

「いいか、着替えてこなかったら授業は受けさせない。」

「じゃあ、授業は出ません。」

そう言った後に、起きた出来事は、とても衝撃的なものだった。

担任は、周りに誰もいないのを確認してから、無理矢理私の長袖のジャージを脱がせたのだ。

「なにするっ、んですかっ!!!」

その時、私を見た担任は凍りついた。

「さ、ささも、り、」

「返してっ!!!」

私はジャージを担任の手から奪い取って、身を隠した。
そして、誰もいないところまで駆けていって、声を押し殺して泣いた。

誰にも、見られたくなかった。

だから、今までずっと隠し通してきたのに。


この体に刻まれた、無数の傷跡を。


「あの人」の仕打ちを。



担任は、幸いにもそのことは口外しないと決めたようだった。
だから、私も担任の行き過ぎた指導に関して、誰かに告げるつもりはない。

ただ、私が去ればいい、それだけのことで済むのなら。

もう私は、あの教室には行かない。

行けないんだ――