「先生!!」


叫びながら入ったのに、中には誰もいなかった。

数学科準備室で、待っているという意味ではなかったのか。

私は不安になる。



仕方なく、先生の椅子に座る。



この椅子に座る日がまた来るなんて、思わなかった。



思えばここで、本当にいろんなことがあった。

私の高校生活は、全部ここにあるような気がした。



本当の自分になれたのは、ここにいるときだけだったんだよ、先生。





そういえば、私が壊してしまった写真たては、今もそのままなのだろうか。


罪悪感がふと蘇ってくる。




オーナーに聞いた話によると、あの写真に写っていたのが玲さんなのだろう。

そして、男の子がひとり。




一体、何があったの?

こんな引き出しに、裏返しにして入れておくほど、封印したい思い出が先生にもあるの?




いつの間にか引き出しに手が伸びていた。

開けると、そこにはいつかと同じように、写真たてが裏返しで入っていた。


そっと、その写真を裏返す。




「え―――――」




その写真を見て、私は息を呑んだ。