車のクラクションや街の喧騒が遠くから聞こえて、ふわふわと浮かんでいた意識が徐々に鮮明に浮かび上がって来る。瞼に温かな熱を感じて沙樹がゆっくりと目を開けると、穏やかな冬の朝日が差し込んできた。


「ん……」


 その眩しさに目を細めて何度か瞬きをすると、身に覚えのない部屋にいることに一気に目が覚めた。


「こ、ここは……?」


 沙樹がゆっくりと視界を左右させて寝返りをうつと、自分のすぐ横で小さな寝息を立てている逢坂が目に飛び込んできてハッと息を呑んだ。すっと伸びた長いまつ毛と整った輪郭に、闇の中で見る逢坂の容姿とはまた違った印象を受けた。


「っ!?」


(も、ももももしかして……は、裸!?)


 沙樹が身動ぎすると、思わず手が逢坂の素肌に触れた。ベッドの中で一糸まとわぬ姿でいるのだと察すると、瞬間湯沸かし器のように顔が上気しだした。


 その時―――。


「んー」


 逢坂の瞼が微かに震えると、その瞳が開かれた。


「お、おはよう……ございます」


「……あれ、なんでお前こんなとこにいるんだ?」


「それはこっちの台詞ですよっ!」


 沙樹が思い余ってガバリと起きると、逢坂の逞しい上半裸が現れてドキリとする。


「寒いんですけど?」


 逢坂は引き剥がされた布団を胸元にたぐり寄せると、再びまどろみ始めた。


「も、もう! 何か服着てください!」


「なんで?」


 しどろもどろになっている自分とは裏腹に、逢坂は平然としている。


「な、なんでって……そ、その目のやり場的なものが―――」


「別に、減るもんじゃないだろ」


「そういう問題じゃないんです!」