時刻が、12時28分を指しているのが見えた。

あと20分はあるのに、やたらと白い壁についていると時計を気にしてしまう。

いちいち確認してしまう俺を、お母さんは、


「どうしたの皐月くん?」

と、揺れる白いカーテンから窓の外を見ながら、言った。


「……あ、待ち合わせしてるんですゆりと」


「あら、デート?」


「まあ、そんなところです」


「初々しいわね」


そういって、お母さんはくすくすと目を細めると、にっこり、俺の方を見て微笑んだ。



「いいのよ、可愛い彼女さんを待たせるわけにはいかないわ。

 行ってらっしゃい」



「……はい、行ってきます」



ゆっくりとパイプ椅子から立ち上がると、お母さんは小さく俺の方へ手を振っているのが見えた。