ポケットから小さな懐中電灯を取り出すと、カチッとつけた。


「どこまで上るの?」


「それは秘密。ほら、いくよ」


そういって、皐月くんはまた私の手をひっぱり始めた。



***


鈴の音や、木々の擦れる夜の音に耳を澄ませながら、真っ暗な足元を小さな明かりを頼りに上っていく。



しばらく、無言で歩いていると───皐月くんが、


「もうすぐだよ」


と声をかけてくれた。


周りを見渡すと、さっきまで真っ暗だったのが、少しだけ青色に見えて───夜明けが近いことを教えてくれる。


そして、皐月くんは私の後ろに回ると、そっと目を隠して───



「おれがいいって言うまで、見ないで」


「わ、分かった」



一歩、一歩、頼りない足取りで───進んで、そして、皐月くんの足が止まる。