美味しそうだな、と思っていたチョコレートケーキを作る。 私の分は要らないから、一人分。 銀司の分だけ。 作らないと言っていたケーキを作り始めた私を変な目でお母さんは見たけれど、何も言ってこなかった。 作ったケーキは一応西村宅に届けた。 「あら、葵ちゃん、銀は帰ってないけどあがってる?」 「ううん、大丈夫。これ届けに来ただけだから」 おばさんに渡して帰ってきた。 誕生日おめでとう、銀司。 そういえば、銀司にそう言ってなかったな、なんて。 今更。