言えない。
それは正しい。佐月君はちーちゃんのことよく分かってるなあ。
「なんかしんみりしちゃったね、ごめんね」
「いや、葵ちゃん大丈夫?」
「大丈夫大丈夫ー、またね」
家が反対方向だから佐月君と別れた。
レシピ本が重たい。そんな厚くないんだけどな。
家に帰るとお母さんが不思議そうな顔で私を見る。
「あれ、今日って銀君の誕生日じゃないの?」
「うん、そうだよー」
「ケーキ焼かないの?」
「なんかクラスメートが祝ってくれるみたいだから」
そう言って部屋に籠もった。買ってきたレシピ本をペラペラと開く。



