ありがとうございましたー! と背中にかかる店員さんの声が恨めしい。 文庫本が化けた。レシピ本に化けた。 「そういえばちーちゃんは一緒じゃないの?」 「うん、智子は今日バイト」 あ、そうなんだ。 二人で駅の方へ歩く。 「何のケーキ作るの?」 「去年はショートケーキだったからね、今年はチョコレートとかかなあ…」 ありもしない計画を言っていて虚しくなる。 銀司はクラスの方へ行ってしまった。 カラオケに行くとか言っていたっけ。 確か駅の方だった気が…… 「葵」 呼びとめられた。