「…ただいま」


エリカが玄関まで俺を出迎える。


「お帰り~遅かったね~ご飯は?」


「エリカ…
何度も言ってるけど、俺の分の食事とかは作んなくてもいいからさ…」


「え?全然気にしないで。
一人分も二人分も変わらないし。」

無頓着な笑顔でそう返事がかえってくる。


「そういうんじゃなくて……
その…あまり干渉されたくないんだ…」


「…そんなつもりじゃなかったんだけど、あたしうざかった?
ごめんなさい…」


「いや…俺もごめん」

いたたまれない空気になり、俺は自分の部屋にかけこんだ。


部屋に入り鞄を床に投げ捨てて、そのままベットへなだれこむ。


「はぁ………」


自己嫌悪ばかりが強くなっていく。
傷つけるために戻ってきたわけじゃないのに…。


あの夜の事をもう一度きちんと話してここを出ていこうと決めたんだ。


あの夜俺は…

横柄な態度の客とトラブって、その後浴びるほど酒をのんで…

そこから先の記憶がほとんどない。


どうやって家まで帰ってきたのかも?


朝起きたら、自分のベッドの上。


ただ

俺の横にはエリカが寝ていた……。



驚く俺に


『何も覚えてないの…?』

と、エリカは少し悲しそうに微笑んだ。



『あの日の事はもういいよ…』


今もエリカはその一点張り…。


葵の存在が大きくなるにつれ、どうにもならない後悔ばかりが大きくなっていった。