駅前の表通り。


一方通行の車道を挟みたくさんの飲食店が立ち並んでいる場所。


平日でも夜は特に人通りが多く、いつも賑わっていた。


行き交う人と肩がぶつかりそうになりながらも、私たちは足早に細い路地を入り裏通りに出た。



目指すBar『エンジェル』


華やかな夜のネオン街にひっそり佇む雑居ビルの三階。



「いらっしゃいませ~ いらっしゃいませ~」


扉をあけた瞬間に、店の至る所から威勢のいい声が聞こえた。


「いらっしゃい。
また来てくれたんだね。こちらにどうぞ」


真っ先に声をかけてくれたのは、巧みなシェーカーさばきの

あの彼だった。



「今日は…
親友をつれてきたの。」


「あっ、か、香織です。葵に素敵なお店があるって引っ張ってこられたんですけど、来てよかったぁ~。

めちゃくちゃ気にいっちゃった」



へ…?もう?



香織はキョロキョロ店内を見渡しながらとても喜んでいる様子。

気に入るのが早い。

「それはどうも。初めまして、斗真です。香織ちゃんよろしく」