そっとドアを開けたあたしに斗真が気付いた。


「おぅ?
エリカか~見舞いがおせぇよ~」


あまりに元気な声とあたしに対しての普通の接し方に戸惑った。


「…あっ…うん」


なんか変な感じがした。


「…ど…う?体は」

「あぁ~いちよ明日退院だってさ」


「そう…?

あのさ…その、斗真あたしの事覚えてるんだ…?」


「あったりまえだろ?
妹みたいなもんなんだからさ」


屈託のない笑顔で話す斗真を見て、ホントに記憶がなくなってるんだと思った。

そこにいたのは…

昔の斗真だったから。


あたしをほんとの妹みたいに可愛いがってくれていた斗真の笑顔だった。


あたしが好きだった事もあたしがしてきた酷い事も…


全部覚えてないんだね…?


あんなに心の底から好きだった葵さんの事さえも覚えてないなんて…