「斗真?」


「ん?」


エリカさんのことは?


家へと帰る道のり。
一瞬出かかった言葉を飲み込んだ。


「…何でもない。
呼んでみただけ~みたいな」


ニコッとごまかし笑顔の私に


「お前って結構幼いな?」


なんて意地悪な言葉を返してくる。


「悪い?
そんなこというなら、もう家いれてあげないよ~」


「っていうか、おれ鍵もってるもーん。お先に」


合鍵をチラッとだけ見せてツカツカと歩きだす斗真を追いかける。


「もう~待ってよ~一個ヒール壊れて歩きにくいんだから~」


何にも言わない斗真のことが、少しだけ気になった。


エリカさんの状態が本当だとすれば、そんなに簡単に家をでられるわけがない?

そんな気がしたから…


でも、斗真が何も言いたくないなら、無理に聞かない方がいい…





あんなに待ち望んでた斗真と新しいスタートの夜、

私の胸には新たな不安がめばえていた。