突然、斗真の胸の中に引き寄せられた。
「斗真…
誰か来たらどうすんの?」
「別にいいよ…」
「でも…ほんと誰かにみられちゃうよ?」
「そのときはそのとき」
「え?…あっ」
そのまま私の唇は塞がれた。
エレベーターが開いて突然誰かにみられてしまいそうな…
そんな状況に、私の胸はドキンドキンと大きく音をたてはじめる。
ほんの数分話しただけ。
抱きしめられただけ。
キスをしただけ。
なのに
ただそれだけで
あんなに不安だらけだった私の心のなかは、一瞬にして安心という文字で満たされた。
「帰りにちょっと
飲みに行かない…?
葵ともっとちゃんと話がしたいから…」
私はもちろん首を縦にふった。
そして二人で一緒にまた店に戻った。
もし…
この時私たちがあとほんの数分この場所に一緒にいたとしたら?
自体は少し変わっていたのだろうか?


