風が吹き抜ける裏庭はすっかり秋の気配を漂わせて、イチョウの木がほんのり色付いている。 「光流がね」 風になびく髪を手で押さえながら智沙がゆっくり口を開く。 「なんだか最近元気がないような気がして……航希、何か知らない?」 切羽詰まったような智沙の顔。 心配そうに揺れる瞳。 「直接本人に聞きゃいいだろ?」 「聞いても何もないって言うんだもん」 「俺だって知らねえし。お前がなんかしたんじゃねえの?」 「心当たりがなくて」 智沙は少し考え込んだ後でそう言った。