利乃は、もうひとりで歩き出している。
トモはまだ納得の行かない顔をしてたけど、「そーだな」とため息をついた。
そして、こっちを向いて。
「……麗奈ちゃん」
そのまっすぐな目に、思わずびくりとした。
トモの瞳に、空が映る。
…雲が、ゆらゆらと揺れていた。
「…いや。やっぱ、なんでもない」
「えっ」
パッとあたしに背を向けて、トモはさっさと歩き出す。
その背中が元気な彼らしくなくて、気になった。
「小城さん」
横から名前を呼ばれて、そっちを見る。
池谷くんが、前を見つめながら「ごめん」と言った。
……え。
眉を寄せて『なにが?』という顔をすると、池谷くんは面白そうに笑った。
ええ、そんなに変な顔してた?
「……小城さんは、優しいね」
目を細めて、彼はあたしを見つめる。
…『優しい』って。
そう言う池谷くんの笑顔の方が、ずっと優しい気がするけど。



