「……あ、ごめん。待たせて…」
あたしがそう言うと、トモは首を横に振る。
その後ろで、利乃は笑わずに目を伏せていた。
……利乃?
「………慎也。お前さぁ」
トモが、じっと池谷くんを睨むくらいに強く見つめる。
池谷くんは、気まずそうに目をそらした。
…え、なに、その険悪な感じ。
ちょっと、と口を挟もうとしたとき、利乃が「あつーい」と言った。
それは、彼女のいつもの声色で。
「早く行こうよ〜、私、熱くて死にそう」
そう言って、パタパタと顔を手で扇ぐ。
でもその顔には、あんまり疲れた様子も見えない。
…それにさっき、池谷くんが利乃は夏、誰より元気がいいって。
「……そうだね。小城さんの顔色も良くないし、早く帰った方がいい」
池谷くんも息をついて、立ち上がった。
あたしはもう、そんなにきつくはないんだけど……



