青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



「…理屈じゃないんだよ。好きで、どうしようもない」


目を見開くあたしに、彼は続ける。

寂しい寂しい、表情をして。

彼は優しく、穏やかに、笑う。


「…その人の、誰より大切な人になれたら、それだけで幸せだろうね」


………うん。

うん、うん。

きっと、幸せだ。

大切な人の大切な人になれたら、それだけで。


……きっと誰より、幸せだ。



「…慎也!」


トモの声に、ハッとする。

横断歩道を渡ってきたトモと利乃が、こっちへ走ってきていた。

それを見た瞬間、池谷くんの手がパッと離れる。

それにドキッとして、胸が痛んだ。


トモはあたし達を見て、はぁ、と息を整える。

焦ったような顔をして、唇を噛んでいた。