青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



「じゃあね、ありがとう」


そう言って、あたし達に背を向けて歩いて行った。

「………」

残されたあたし達の間に、沈黙がおりる。

少し丸まった女性の背中を見つめながら、立ち上がってあたしは口を開いた。


「……大切な人を失うのって、どんな気持ちなんだろう」


怖く、ないのかな。

それまで一緒にいてくれていた大好きなひとが、目の前から消えていくなんて。

考えただけでも怖くて、恐ろしい。

池谷くんはしゃがみこんだまま、「辛いよ」とまっすぐな瞳をして言った。


「…心の中に、穴が空いたみたいになる」


……池谷くんは、そうなったんだ。

あたしの知らない、過去に。