「あらあら…ありがとうねぇ」
可愛らしい微笑みを浮かべる女性に、気持ちがほっこりする。
どうやら買い物帰りなのか、カバンのなかに、いくつか食材が入っていた。
全部を拾い終わると、女性は「ありがとう」と言って、立ち上がった。
「助かったわぁ。荷物が重くって」
「いえ。気をつけて下さい」
そう言って微笑んだ池谷くんに、女性は目を細めた。
「…笑った顔が、うちの旦那にそっくり」
……優しい、笑み。
懐かしむような声色で、女性は「でもあなたみたいに、優しい人じゃなかったわねぇ」と言う。
……このひとの、旦那さんは。
あたし達の顔を見て、女性は「なんてね」と言った。
「もう、主人は三年前に亡くなっているんだけど。ごめんなさいね、いきなり」
「……いえ」
ふふ、と笑って、女性は荷物を持ち直した。



