「……私をひとりにするなんか、許さないもん」
そう言って、彼女は可愛らしく唇を尖らせるけど。
…ウソだ、と思った。
それなら、利乃ちゃんだって一緒に走ればよかったんだ。
なのに、止めた。
まるで、ふたりきりにさせようとでも言わんばかりに。
「……邪魔、しないでよ」
「………ダメ、なの。ごめん、トモくん」
俺の服の裾を、ぎゅう、と掴む。
その手が震えている気がして、俺は目を見開いた。
……なんで、そんな辛そうな顔してんの。
なんで………
利乃ちゃんの視線の先には、ふたりがいて。
夏の暑さが肌ににじむなか、俺はその場に立ち尽くしていた。
*
「…っ、池谷くん」
女性と、にこやかに会話をしながら荷物を拾う池谷くんの隣に座って、あたしも拾う。
「……小城さん」
池谷くんが驚いたような声であたしを見たけど、なにも言わなかった。



