「……っ、」
横断歩道へと歩いていた、足が止まる。
あたしは反射的に、そこへ走り出した。
利乃とトモは、もう横断歩道を半分まで歩いていて。
「………っ麗奈ちゃん!」
後ろでトモの声が聞こえたけど、振り返らなかった。
…だって、もう。
走り出したこの足を、止める術をあたしは知らない。
*
「………………」
麗奈ちゃんが、慎也のもとへ駆け寄っていった。
ここからでも見えるけど、ふたりはおばあさんらしき人の荷物を拾ってあげている。
俺と利乃ちゃんは横断歩道を渡って、ふたりの様子を見ながら待つことにした。
……ホントは、麗奈ちゃんと慎也のもとへ、行くこともできたんだ。
そのくらいの時間は、あったのに。
「……利乃ちゃん。なんで、引き留めるんだよ」
今も、俺の服の裾を掴んで離さない利乃ちゃんに、止められたんだ。
ふたりの方へ走ろうとする俺を、『ダメ』と言って。



