「もう、おっそい!」
利乃が頬を膨らませて、あたし達に叫ぶ。
トモの不安気な目とぶつかって、思わず目をそらした。
…なんで?
わかんない。
もう、わかんないことばっかりだ。
自分がどうしたいのか、どうするのが正解なのか。
今まで、なんとか間違えないように、生きてきたつもりだけど。
空の青さが、あたしを焦らせる。
雲が、ゆったりと進む。
変わらない雨音が、あたしを安心させてくれていた。
…けど、もう。
そのとき、横断歩道の信号が青に変わった。
利乃とトモが、歩き出す。
あたしと池谷くんも、後を追おうと歩き始めた。
…そのとき。
「……あ」
池谷くんが、後ろへ振り返った。
そして、そっちへ走り出す。
…え、今度はなに…
見ると、すぐそばにある歩道橋の階段の前で、お年寄りの女性が荷物を落として、拾っている。
池谷くんはそれに気づいて、手伝いに行ったんだ。



