「……うん。なりたいよ、すごく」
そう言った彼の目は、あのときみたいに、寂しそうだった。
どこか諦めたような、自嘲するような、そんな笑み。
…あたしが知ってる、『夢』を語る瞳じゃない。
あたしが憧れる、きらきらとしたものじゃ、ない。
…なんで。
「そろそろ、行こっか。大丈夫?」
あたしの思いを遮るかのように言われた言葉に、息が詰まった。
…これ以上、訊かないでってことだ。
踏み込んじゃ、いけない。
「……うん。大丈夫」
……でも、でも。
胸の奥が痛いほどに、騒いでる。
雨音が、強く強く、響いてる。
なんだろう、この気持ち。
わかんない、けど。
どうしようもなく、このままじゃいられない。
しばらく歩くと、横断歩道の近くの木陰で、利乃とトモがあたし達を待っていた。



