どこ行ってたの、と言おうとした、けど。
「はい」
ピト、と頬に冷たいものをあてられて、驚く。
見ると、冷えたペットボトル飲料だった。
「…え。これ」
「小城さん、顔赤いよ。これ飲んで、ちょっと休も」
そう言う池谷くんの首筋は、少し汗ばんでいて。
…近くの自販機で、買ってきてくれたのか。
「あ、ありがとう。お金…」
「いいよ、俺が勝手に買ってきたんだし」
でも、心配してくれたわけでしょ。
すごい、嬉しいよ?
胸の奥が痛んで、でも嬉しくて。
あたしはペットボトルを頬に当てて、目を閉じた。
「……ん。冷たい…ありがとう」
そっと、目を開ける。
…彼は、目を細めてあたしを見ていた。
……ああまた、頭の奥がぼーっとする。
これはきっと、夏のせいじゃない。
いいなぁ、この人。
すごくすごく、いいなぁ。



