青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



「小城さんなら、きっと誰か好きになってくれるよ。そういう心配は、しなくていいと思うけど」


…こういうこと、サラッというからずるいんだよね。

抑えようとしていた気持ちが顔を出しそうになって、焦る。

なんだかちょっとムカついて、「えー」とあからさまな声を出した。

「そりゃ、池谷くんくらいカッコよかったら、そう思えるけどさ。あたし、片想いが実ったことすらないもん。池谷くんにはわかんないだろーけど」

…ああホント、あたしって可愛くない。

言ってすぐに自己嫌悪するあたり、学習しないなぁ。

ごめん、と謝ろうとすると、池谷くんは変わらない声で「そんなことないよ」と言った。



「俺だって、ずっと実ってないし。片想い」



コーラの缶を取ろうと伸ばした手が、止まる。

…え?

そっと、池谷くんを見た。


「…池谷くんも、好きな人…いるの?」


呆然として見つめるあたしを、彼は優しく笑って見つめ返した。