「小城さんなら、きっと誰か好きになってくれるよ。そういう心配は、しなくていいと思うけど」
…こういうこと、サラッというからずるいんだよね。
抑えようとしていた気持ちが顔を出しそうになって、焦る。
なんだかちょっとムカついて、「えー」とあからさまな声を出した。
「そりゃ、池谷くんくらいカッコよかったら、そう思えるけどさ。あたし、片想いが実ったことすらないもん。池谷くんにはわかんないだろーけど」
…ああホント、あたしって可愛くない。
言ってすぐに自己嫌悪するあたり、学習しないなぁ。
ごめん、と謝ろうとすると、池谷くんは変わらない声で「そんなことないよ」と言った。
「俺だって、ずっと実ってないし。片想い」
コーラの缶を取ろうと伸ばした手が、止まる。
…え?
そっと、池谷くんを見た。
「…池谷くんも、好きな人…いるの?」
呆然として見つめるあたしを、彼は優しく笑って見つめ返した。



