「はーい、じゃあ慎ちゃんと麗奈ちゃん!行ってらっしゃーい」
利乃ちゃんが楽しそうに笑うと、麗奈ちゃんと慎也は苦笑いしながら、昇降口へと歩いていく。
その姿が見えなくなるまで無言で見ていると、横から声がした。
「…ふたりに行かせて、よかったの?」
その言葉に驚いて、バッと横を向く。
利乃ちゃんはふたりの姿を見つめながら、感情の読み取れない笑みを浮かべていた。
「…え、なんで…」
「誤魔化さなくていいよ。私にはトモくんの気持ちなんて、ずーっと前からバレバレだったんだから」
ま…マジか。
恥ずかしいな、俺。
利乃ちゃんは俺を見上げて、いたずらっ子のようにフッと目を細めた。
「…なんか、今日といい昨日といい、麗奈ちゃんとトモくん、ぎくしゃくしてるよね。告白でもしたの?」
思わず、持ってる弁当箱を落としそうになる。
俺の反応が予想通りだったのか、利乃ちゃんはニヤニヤ笑っていた。
…あー、もう。
利乃ちゃんは天使みたいに可愛いことで有名だけど、実際はかなり小悪魔だ。
その可愛さを自覚してるし、それでいて性格はいいから、さらに達が悪い。
利乃ちゃんもまた、俺が普段話しているノリのいい女子たちとは、ちょっと違っていた。



