青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。




「麗奈の気持ちは、わかったから。…あとは、俺の問題」


…慎也の、問題。

それは、あたしには何もできないってことで。

あたしは、無言で俯くことしかできなかった。



それから、あたしは図書館に戻って本を棚へ戻した。

慎也も手伝ってくれて、そのあとは一緒に帰った。


……伝わったのかな。

あたし、ぶつかれたのかな、トモ。

でも、慎也の表情は晴れなくて。


…あとは、何が足りない?

彼が前を向くための、決定的な何かは………


そのとき、近くの海の潮風が香って、あたしは目を見開いた。

……そうだ、海。



海の『青』が、足りないんだ。







午後、八時。

帰り着いた家の前には、何故かトモの姿があった。


「よっ、慎也。久しぶり」


Tシャツ姿で、俺の家の門に寄りかかって立っている。

俺は驚いたけど、すぐに平静を装って「…どしたの」と返した。

すぐそばの街灯が、トモの顔を照らす。

トモは俺の反応を見て、不満げに頬を膨らませた。