「麗奈の気持ちは、わかったから。…あとは、俺の問題」
…慎也の、問題。
それは、あたしには何もできないってことで。
あたしは、無言で俯くことしかできなかった。
それから、あたしは図書館に戻って本を棚へ戻した。
慎也も手伝ってくれて、そのあとは一緒に帰った。
……伝わったのかな。
あたし、ぶつかれたのかな、トモ。
でも、慎也の表情は晴れなくて。
…あとは、何が足りない?
彼が前を向くための、決定的な何かは………
そのとき、近くの海の潮風が香って、あたしは目を見開いた。
……そうだ、海。
海の『青』が、足りないんだ。
*
午後、八時。
帰り着いた家の前には、何故かトモの姿があった。
「よっ、慎也。久しぶり」
Tシャツ姿で、俺の家の門に寄りかかって立っている。
俺は驚いたけど、すぐに平静を装って「…どしたの」と返した。
すぐそばの街灯が、トモの顔を照らす。
トモは俺の反応を見て、不満げに頬を膨らませた。



