「……何も言わずにキスしたのは…その、ごめん」
あたしと目が合わせられないのか、慎也は赤い顔をして、逃げるように声を出す。
…その姿が可愛くて、こんなときなのに胸がぎゅうっとなった。
すると、目をそらしていた彼の瞳と、目が合う。
ドキリと、心臓が鳴った。
「麗奈のことが…っていうのも、…否定は、しない」
…それって。
顔が、一気に熱くなっていく。
けど慎也は、目を伏せて「でも」と言った。
「………まだ、待って」
力なくつぶやかれた言葉に、あたしは何も言えなくなった。
…待って、って…?
あたしは、眉を寄せる。
慎也は手のひらを、ぎゅっと握りしめた。
「…俺はまだ、…利乃から離れられない。…ごめん」
…また、『ごめん』。
慎也、あたしに謝ってばっかりだよ。
……何も、悪くはないのに。



