そう思ったけど、慎也は立ち止まっただけで振り返らない。
…ちょっと。
「慎也」
何か、言ってよ。
「……っ、あたしのこと、好きってことじゃないの!?」
いてもたってもいられずに叫ぶと、慎也は今度こそ目を見開いて振り返った。
自分で言ってて恥ずかしいけど、もう気にしない!
「キスするって、そういうことだよね?好きじゃない相手になんか、しないもんね!?」
慎也の顔が、赤くなっていく。
図書館の階段を上がってくる人は、あたしたちを見て、微笑ましいものを見るような目で見てきた。
「もしかして、好きじゃないのにキスしたの!?最初からフるつもりで、キスしたの!?」
「ちょ、麗奈っ……」
「だって、わかんないもん!慎也、何も言ってくれないからっ…」
焦った顔をして、慎也があたしに向かって階段を上がってくる。
「なんで、キスし…っ」
「麗奈!」
もが、と。
慎也の手で口を塞がれ、それ以上は言えなかった。
手が離され、むーっと睨むと、慎也は赤い頬に手の甲を当てて、ため息をつく。
…なにさ。
慎也が悪いんじゃん。



