「…あ、ありがとうございま…」
お礼を言おうと思って、顔を上げる。
……その瞬間、あたしは目を見開いた。
「…し、んや」
目の前にいるのは、慎也。
明日まで会えないだろうと思っていた、慎也だった。
呆然としたあたしのつぶやきは、彼の耳に届いて。
彼の口から、ため息をつかせた。
「…気づくの、おっそ」
固まるあたしに構うことなく、拗ねたように唇を尖らせて、彼は本を拾っていく。
…な、なんで、なんで。
口をパクパクとさせるあたしを見て、「本、返しにきたんだ」と言った。
「……前に、借りた本。返却期限そろそろだったから」
…あ。
あたしと図書館に行った時、そういえば本を何冊か借りてたっけ。
「そ…そっか」
かろうじて返事をしたときには、彼はもう本をきっちりと積み上げていて。
そして、「どこ?」と言った。



