青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



『悲しい』って感情を、共有できない。

それがどれだけ大きな溝になるか、あたしはもう知ってるんだ。


「…慎也も利乃も、苦しいって言ってくれないんだもん。だから、怒っちゃった。…あたし、失敗したのかな」


わかん、ないな。

ふたりじゃないから、ふたりの気持ちなんかわかんない。

当たり前のことだけど、それがこんなにも切ないなんて、思わなかった。


トモは何も言えずに、黙っている。

目を伏せて、どうしようない事実を、静かに受け止めている。

…きついね。


大切な人と分かり合えないって、こんなにも辛いんだね。



「…でも、あたしが辛いって言ったら、絶対ふたりは心配してくれるんだよね。…優しいから」

「うん」

「…ふたりの負担にだけは、なりたくないな」


大切だから、頼って欲しくて。

けど、いざ自分が辛くなると、負担になりたくないと思う。

だから、何も言えなくて。

…あ。

そこで、あのふたりもそうなんだと思った。

だから、何も言ってくれないのかな。

あたしとトモのことを大切に思ってくれてるからこそ、何も言えないでいるのかな。

それってなんか、切ない。

大切に思ってるからこそすれ違うなんて。