色んな柄の便箋を取り出しては、時候の挨拶だけを書いて。

送る勇気なんて出ないまま、想いごとしまい込むように封筒へ入れる。

切手を貼られることのないそれらは、君への想い、そのもの。


【君は今、どうしていますか】


君がいない夏は寂しくて寂しくて、未だに上手く息をすることができません。

ああそういえば、高校に入学してすぐに、新しい女の子の友達ができました。

小城麗奈ちゃんって言って、ちょっとクールで、でもとても可愛い女の子です。


私に女の子の友達ができたんだと思うと、今でも信じられません。

麗奈ちゃんとお喋りするのを楽しみに、毎日学校へ行っています。


そこでペンを置いて、書いた文章を眺める。

封筒へいれて、これだけでも出してみようかと悩んで。

けどどうしても、出せなかった。


麗奈ちゃんがいれば、君のいないこの空間が、埋まるかもしれないと。

そう思ってはみたけど、やっぱり無理だった。


君がいない夏は寂しくて、私はひとりで海にも行けません。


【ずっとずっと、君だけでした。私には、君だけでした】


わがままで嘘つきで、大嫌いな私。

そんな私を愛してくれていた、優しい君。

互いにないものを補い合って、依存していた馬鹿な私たち。

それでも、よかった。

君がいれば、生きていけた。