青に染まる夏の日、君の大切なひとになれたなら。



「だって、慎也はあたしのこと見てくれないもん!頑張ってぶつかっても、全然っ……もう、諦めるしかないじゃん!」


ああダメ、また涙が出そう。

喉が痛くなるのを必死にこらえるあたしに、利乃は首を横に振った。

「そんなこと、ない…!見てる、慎ちゃんはちゃんと、麗奈ちゃんのこと見てる!」

…わかってるよ。

はじめのころは、隣にいてもあたしは彼の瞳に映ってなかったけど。

今はもう、彼のなかにちゃんと『あたし』がいる。


慎也のことが好きな、『あたし』がいる。


…でも、でも。


利乃の言葉に何も言わないあたしに、彼女は唇を噛んで。

迷うように瞳を動かして、そしてきつく目を閉じる。

「お願い」と言った声は、震えていた。


「お願い、麗奈ちゃん。慎ちゃんのこと、諦めないで。もっともっと強く、慎ちゃんのこと引っ張って…!」


…だって、無理だったんだよ。

あたしだって、もっと揺さぶって、引っ張って。

あの寂しい笑顔を、変えたかった…けど。

でき、なかったんだ。

大きな瞳を揺らして俯く利乃に、あたしは震えそうになる声と一緒に、暴れ出しそうな感情も押さえつけた。


「…あたしは、奪えなかった」


利乃が、目を見開いて顔をあげる。

…あたしから目を逸らす、慎也にも。

何も言ってくれない、利乃にも。

悔しくて、自分が情けなくて。

もう、やだよ。

なんで何も、言ってくれないの?