「…利乃から、手紙、もらったことある?」
慎也の目が少しだけ、変わった。
ぼうっとしていた瞳が、ハッとする。
あたしを見て、困ったように眉を寄せた。
「……ない、けど…」
…やっぱり。
あのとき利乃の家で見た手紙達は、慎也のもとへ届けられることはなかったんだ。
けど利乃は、あたしに『手紙のやりとりはしていた』と言っていた。
あんなにまで多くの、届かずにしまわれてしまった手紙達。
あの中には、いったいどんな想いが綴られていたんだろう。
どうして利乃は、出せなかったんだろう。
あたしは「そっか」とだけ言って、目を伏せる。
それ以上何も言わないあたしに、慎也は焦ったように声をあげた。
「手紙って…麗奈、なんか知ってんの?」
「……利乃のことだから。あたしは、何も言えない」
ごめん、と言うあたしに、慎也は何か言いたげに眉を寄せる。
その表情のなかに、きっも色んな感情が入り混じっているんだろうと、思った。
「……あたしは、何も言えないけど。もし慎也と利乃の間に、何かあったんなら。…無遠慮だけど、知りたいって思う」
パシャン、とスニーカーが水たまりの端っこを踏む。
布地が、ジワリと水を吸った。



